2022年は、日朝平壌宣言が発表されて20周年目である。
この節目の年に、これまでの20年を振り返ると、残念ながら日朝関係が良い方向に進展したとは言えない。
過去には、1990年に三党合意、1993年に河野談話、1995年に村山談話を発表するなど、日朝国交正常化に向けて前進していたと思われるが、安倍政権発足以降、こうした歩みは止まった。
元来、日朝平壌宣言では、
前文:両首脳は、日朝間の不幸な過去を清算し、懸案事案を解決し、実りある政治、経済、文化的関係を樹立することが双方の基本利益を合致するとともに、地域の平和と安定に大きく寄与するものとなるとの共通の認識を確認した
1項:2002年10月中に日朝国交正常化交渉を再開する
2項:日本側は、過去の植民地支配によって、朝鮮の人々に多大の損害と苦痛を与えたという歴史の事実を謙虚に受け止め、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明した
3項:双方は、国際法を遵守し、互いの安全を脅かす行動をとらないことを確認した
とされており、国交正常化に向けて、最も優先されることは、「過去の清算」であることが明らかになっている。
つまり、過去の清算をする前に、拉致問題や核ミサイル問題を解決しようとしていた安倍政権の立場は、日朝平壌宣言に則っているとは言えなかったということである。
しかし、岸田政権発足後も、拉致問題を優先する方針を転換することなく、「過去を清算して国交正常化交渉を再開する」という日朝平壌宣言の目的を果たさずにいる。
日朝平壌宣言は、「過去の清算」を行った後、「国交正常化交渉を行う」という日本と朝鮮民主主義人民共和国の両政府が合意した価値あるものである。
日朝平壌宣言が発表されてから20年がたった今、改めて、この宣言の意味を再認識する必要がある。
(文:愛媛現代朝鮮問題研究所)